第1章 日輪を繋ぐもの
【千聡side】
杏寿郎さんが任務に出て3日目。
明け方運ばれてきた隊士たちの処置を終え
換気のためドアを開け放った処置室で備品の補充を終えた。
「ふぅ、」
食欲もあまりわかないし、夜勤中はもちろん最後に固形物を口にしたのは…昨日の昼だったか。
「明日が非番でよかった…」
脚に文を括り付けた鴉が窓辺にとまった。
「カァー!炎柱、煉獄杏寿郎ヨリ煉獄千聡へ!カァー!」
『先程、駅に着いた
駅弁というものがあるらしく
牛鍋弁当が美味かった
千聡の料理には劣るが、君にも是非食べてほしいので帰りの土産にしようと思う』
まったくこの人は。
自分でも気付かぬまま、頬が緩んでいたらしい。
「おはようございます、千聡さん。
そのお顔は、煉獄さんからのお手紙でしょうか?」
「…っ!?すみません、皆さんお忙しいのに、不謹慎ですよね」
「いいえ、近頃顔色が優れないようでしたし、昨夜は急患が多かったですからお疲れでしょう。
離れていても千聡さんを癒してくれるなんて、煉獄さんはすごい方ですね」
この屋敷の主、胡蝶しのぶが柔らかに微笑む。
「休んでいただきたい気持ちは山々なのですがすみません、8号室の患者さん、そろそろ点滴が終わる頃だと思うので交換お願いできますか?
私は2号室の方の術後の診察に行かねばならなくて」
「はいもちろんです。しのぶさんこそ、少しは休んでくださいね」
とん、と自身の目の下の影を指すと、少し気まずそうに笑った。
「あら、千聡さんに心配されるなんて、私もまだまだ修行が足りませんね」