第7章 ❇︎生存if❇︎ がんばれ父上!
「杏寿郎さん、よろしいでしょうか」
「?あぁ」
「失礼します」
片付けを終え、杏寿郎さんの部屋を訪ねた
「どうやら、二人には杏寿郎さんの『気』が特殊な形で感じられるようなのです」
「俺の、気?」
「ええ。杏火は色や形などの視覚で、楓寿郎は、触覚で。
身体に異常はないようでしたが…
杏火には、任務後で昂った気が赤や黒の大きな炎のように見えていたようです。今までそんなふうに見えたことはなかったから、まるで知らない人のようで怖かったと。
楓寿郎は、頭に触れられた手がとても熱く、びりびりと痛んだことに驚いたと言っていました。
私が触れても何ともないようでしたが、他の人ですとまだわかりません。」
きゅっと、杏寿郎さんの眉間に皺が寄る。
「そうか…
先代の柱や、最近入隊した隊士の中にもそうした感覚に優れた者がいるらしい。
稀ではあるが、二人の場合は成長と共に顕れるような体質の類いなのかもしれん。
二人には怖い思いをさせてしまったな…」
少し悲しげな目の下に、日々の疲れか隠しきれない影が浮かんでいた。
「杏寿郎さん。おひるね、しましょうか」
特別な感覚などなくても、表情でなんでもわかってしまうところが可愛い、とは言わないでおく。