第7章 ❇︎生存if❇︎ がんばれ父上!
数日後
朝と夜の境、まだ陽の光の見えぬ時分
聞き慣れた門前の砂利の音で目覚めた
急いで戸口に出ると、見慣れた後ろ姿が草履の泥を落としているのが見えた。
「おかえりなさい。今日はお早いですね」
「あぁすまん、こんな時間に起こしてしまったな。」
「いえ。すみません、すぐお湯の支度をしますね」
「それくらい俺がする。君は子供達のそばにいてやってくれ。」
「でも」
「ここでは体も冷える。さあほら、もう少し休んでいなさい」
半刻ほどすると、髪を下ろして夜着姿の杏寿郎さんが静かに私の部屋の襖を開けた
「寝ていなかったのか」
「なんだか目が覚めてしまって。」
「そうか…こちらはよく眠っているな」
「はい、ぐっすり」
「やはり母の温もりは安心するのだろう」
杏寿郎さんは私の反対側、二人の隣に横になる
大きな手がそっと髪や頬を撫でると、二人とも杏寿郎さんの胸に擦り寄り腕にしがみつき、離さなくなってしまった。
「よもや…」
「ほら、二人とも杏寿郎さんのことが本当に嫌いなわけではないのですよ」
「あの時は嫌で今は平気とは…やはり俺は臭って」
「だから違いますって」
「むぅ」
「朝餉の支度をしてまいります。
杏寿郎さんもお休みになってください」
さらに半刻後。
朝餉ができたと起こしに行ったものの…
手足を投げ出してすやすや眠る子供たちと、布団から盛大にはみ出しているまるで大きな子供があまりにおかしくて可愛くて。
みんなにちゃんと布団をかけ直し、一緒に朝寝をしてしまったのはまた別のお話。