第6章 任務完了!?
「!!!!!!」
かけていた布団を剥ぎ取り、包まりながらころころと転がって杏寿郎さんに背を向ける。
「はは、すまない。
取って食いはしないから、戻ってきてくれないか」
「…」
振り返れない!振り返れるはずがない!!
「…布団を取られてしまっては、風邪をひいてしまうかもしれないなぁ」
バレバレの私の照れ隠しを、笑みを含んだ優しい声が追いかける
「う…」
「千聡」
好いた人が己の名を呼ぶ声に抗える者がいるだろうか。
…否。
「…はい…」
のそのそと元いた場所に戻ると、やはり痛々しい傷が目についた。
「…やっぱり、傷はちゃんと診せていただけませんか」
「…縫ったりするのか…?」
「いえ、このくらいなら縫わない処置ができます。ここでは麻酔もありませんし。」
「相変わらず見事な手際だな」
「感心している場合ですか。ほら、終わりましたよ」
再び灯りを消して二人で布団に身を寄せ、
「痛みませんか」
服の上から傷に手を当てた
「うむ。大丈夫だ」
「よかった。
…はやく治りますように。」
一度、二度とそっとさする
「君は医者だろう?」
「それとこれとは別なんです」
急に視界が暗くなり、額に柔らかな感触が触れた。
「ありがとう。君は過保護だな」
少し困ったように…あまりに嬉しそうに笑うから。
この気持ちを、どう伝えたらいいのだろう。
「杏寿郎さんだからです」
そっと彼の目を覆い、意を決して唇の端に口づけをすると
…目にも留まらぬ速さで杏寿郎さんが布団の外へ転がった。