第4章 陽だまり
「ぅお、お前また重たくなったなァ!」
抱き上げられた杏火は、いつもきゃっきゃと不死川さんの白い髪に手を伸ばす。
つんつんとした感触が面白いようなのだ。
「杏火、ひっぱってはいけませんよ」
「別に気にしてねェからいい」
「しゃあ、しゃあ!」
「あ?」
「きっと不死川さんを呼んでるんですよ」
「…俺ァ『しなずがわ』だ。次会う時までには言えるようになってろよ?『さねみ』でもいいぜェ」
いつものぶっきらぼうな口調とは裏腹に、その顔は優しく溶けている
「…チィ…」
「どうかなさいましたか?」
「うるせェのが来たぜ」
と、塀の上を見やる
「…!」
「派手に久しぶりだな、千聡!!」
「バッカ、声がでけェ…!寝てるチビがいんだろうが」
「うぉ、悪ぃ…」
相変わらず気配も足音もない
一体どうなってるの元柱…
「久々のお越しが音も立てずに塀の上なんて。相変わらずですね宇髄さん」
「つい癖でな。正面から入るのはどうも性に合わねんだ、許せ」
「そろそろ慣れてくださいな」
ヒョイ、とこれまた音もなく庭に降りてくる
「お、不死川のとこにいんのは…」
「杏火です。生まれてすぐ以来でしたか?」
「あぁ。…俺も抱いてみていいか?」
「もちろんですよ」
「泣かすんじゃねェぞ」
「お前のおっかねぇツラと違って女子供は泣かさねえ主義だ」
「テメェ…後で覚えとけェ…」
不死川さんは宇髄さんの残った片腕に、そっと杏火を乗せた
「お前が杏火か!
ほんと、目が千聡にそっくりだなあ。俺は宇髄天元だ。よろしくな」
「ぅ…あぁうぅ…っ」
宇髄さんの逞しい腕に抱かれた杏火はというと、たちまち顔を梅干しのように真っ赤にしてバタバタとその胸をつっぱねはじめた
「悪ぃ悪ぃ、やっぱ母ちゃんじゃなきゃ駄目か!?」
「あぁぁぁぁぁ!うぇえええええん」
「だぁぁすまねぇ千聡、どうにかしてくれ!」
宇髄さんまで泣きそうな顔でこちらを見てくる。
「泣かすなっつっただろうが…!」
「俺はなんもしてねえ!!!」