第4章 陽だまり
温かな陽の下で縁側に並ぶ
お茶とおはぎと、私たち。
「…長い夢を…見ているように思うことがあります」
「………」
「皆さんが命を懸けて願い続けた世を生きていることが」
しのぶさん 蜜璃ちゃん 伊黒さん
時透くん 悲鳴嶼さん 玄弥くん
杏寿郎さん
「…一年だな」
「…はい」
もう一年。
まだ一年。
鬼は去った。
大切な人たちも、また。
「その夢は悪夢か?」
静かな問いに
「いいえ」
と背にした布団の小さな山を見る
「太陽が昇る度に、思うんです。
その日一日が、残されてしまった時間ではなく、杏寿郎さんと皆さんからの贈り物なんだと。
杏火と楓寿郎の成長を見つめられて、
彼の心を、願いをそばに感じられる。
私はちゃんと、幸せです」
「いい顔だァ。煉獄の妻だな」
優しく細められた大きな目が、ふと伏せられる
「玄弥も、同じだった」
遠くを抱きしめるような声だった
「俺に幸せになってほしい、とよ…
…何より…何より守りたかったんだ
玄弥だけは、幸せになってほしかった
二度と会えなくてもいい
生きていて、ほしかった」
大切に思う者のため、求め続けたものをやっと手に入れたのに
その手に何も残っていなかった時の痛みはどれほどのものだろう
もう刃を握ることはないはずなのに
この人は今も己を斬り続けている
まるで、そのために生きているかのように
「何ひとつ守れなかったからよォ…
残り少ねェ命だが、せめて最後まで生きねェと」
空から弾が降ってきそうだ、と見上げる顔は『兄ちゃん』だった
生きる理由なんて人それぞれで
幸せになるため
贖罪のため
いつか来る終わりのため
それとも、生きることそのものが目的か
理由なんて大層なものがなくとも
たとえその選択がその人にとって死ぬより辛くとも
「生きて、ください」
「…言われるまでもねェ」
玄弥くん、ちゃんと届いているよ。
私も祈るよ。
傷に吹きつける哀しい風が、止みますように。
「うぅあう、あむ、ぁう、たあー!」
「杏火」
「起きたかァ」
不死川さんは指の欠けた手で、慣れた手つきで杏火を抱き上げた