第1章 日輪を繋ぐもの
彼の生きた証でもあるこの子に、生きていてほしい。
わがままと称して祈りを紡げば、
炭治郎くんは赫い瞳を少し彷徨わせた後、ぴたりと私を見据えた。
「…鬼を斬るために、俺たち鬼殺隊は全力を尽くします。
でもこれだけは約束します。俺は絶対に、生きることを諦めはしません。
……煉獄さんに、助けてもらった命です。」
形は違えど、杏寿郎さんと同じ答えが返ってきた。
「…今日、あなたに会えてよかった。
ありがとう、炭治郎くん。」
帰り際、まっすぐな瞳はそのままに、
子供『達』に会いたいと言われた時は本当に本当に驚いた。
「だから、沢山食べてきちんと寝てくださいね!」
そう言って穏やかに笑った炭治郎くんは、コツコツと病室を出ていった。
一人になった部屋で、私はゆっくりと夕餉の膳を引き寄せた。
ほとんど冷めたそれはしかし、涙が出るほどおいしく感じた。
「……おいしい……」
おそらくしのぶの味付けであろう、出汁と優しい生姜の香るお粥を腹に収めると
まるで全身で生きる喜びを噛み締めるように、ぽかぽかとお腹のあたりから体が温まってくる。
「そうよね…ごめんね。母さん頑張るから。ふたりとも、元気で、産まれておいで。」
夕餉の膳は、この日初めて空になった。