第1章 日輪を繋ぐもの
懐紙をそっと開くと、それは私が杏寿郎さんに子供のことを知らせた手紙だった。
その裏に
桜寿郎 蘭寿郎 楓寿郎 安寿郎 蓮寿郎
杏火 璃火 藤火 千花 雪華
そのほかにも紙いっぱいに、沢山の名前が綴られていた。
全ての文字から、彼の愛が伝わってくる。
…こんなにたくさん。
紙を埋め尽くす軌跡に、
杏寿郎さんと重ねるはずだった未来をみた。
「俺…俺、もっともっと強くなります!!!」
苦しそうに叫ぶこの子の、見てきた景色と、これからも歩むであろう道を思った。
「俺を信じると言ってくれた、煉獄さんに追いつけるように!!千聡さんがもう泣かなくていいように!!!
鬼舞辻無惨は、俺たちが絶対に、」
「絶対に」
咄嗟に遮ってしまったのは何故だったのだろう。
どこか…彼が死んでしまうような気がしたからかもしれない。
「絶対に…生きて。」
ねぇ、杏寿郎さん
あなたの守ったこの少年の覚悟が
今も、私たちを守ろうとしてくれている。
「…やっとわかったの。
やっと…わかったのに…っ」
ありがとう。
会いたい。
愛しています。
こんなにも溢れる想いを、あなたに伝えることができないなんて。
あなたの遺したものは、このまだあどけない少年の心に受け継がれて、生きている。
そして、私の中に宿る小さな命がある。
人の思いというものは、こうして連綿と繋がっていくのだろう。
杏寿郎さん。あなたはこうして、これからも共に在ろうとしてくれているのね。
それならば私も、
あなたが願ってくれた笑顔を
失くすことなく歩みましょう。
「私ね、杏寿郎さんの笑顔が大好きだった。
炭治郎くんが死んでしまったら、あの人きっと悲しむわ。もちろん私もよ。
だから、これは私のわがまま。
生きて。」