第1章 日輪を繋ぐもの
懐紙に包んだ小さな紙を開いた千聡さんは、紙に目を落としたまま動かなかったけれど、俺は言わずにはいられなかった。
「俺…俺、もっともっと強くなります!!!
俺を信じると言ってくれた、煉獄さんに追いつけるように!!千聡さんがもう泣かなくていいように!!!
鬼舞辻無惨は、俺たちが絶対に、」
「絶対に、
絶対に…生きて。」
「…っ」
こちらをまっすぐに見つめる千聡さんは、今にも壊れてしまいそうだった。
そして、今度はふわりと蕾が綻ぶように、幸せそうに笑った。
「やっとわかったの。
やっと…わかったのに…っ」
ぽろぽろと、玉のような涙を溢れさせながら、それでも千聡さんは笑っていた。
「私ね、杏寿郎さんの笑顔が大好きだった。
炭治郎くんが死んでしまったら、あの人きっと悲しむわ。もちろん私もよ。
だから、これは私のわがまま。」
ーーーーー生きて。
『竈門少年が死んでしまったら、俺の負けになってしまうぞ』
よく似た匂いの二人が、重なって見えた気がした。
心を繋げた者同士の
互いを慈しみ、愛する匂い。
ーーーあの時。夥しい量の血を流して苦しい呼吸の中、千聡さんへの言葉を紡ぐ煉獄さんからは、紛れもない愛情の匂いがした。
それは、今目の前で抱えきれない悲しみに涙しながらも笑う千聡さんからも。
煉獄さんもきっと、千聡さんの笑顔が大好きだったのだろうなぁ。
でも、だからこそ。
「…鬼を斬るために、俺たち鬼殺隊は全力を尽くします。
でもこれだけは約束します。俺は絶対に、生きることを諦めはしません。
……煉獄さんに、助けてもらった命です。」
「…今日、あなたに会えてよかった。ありがとう、炭治郎くん」
その目はもう、揺らぐことはなかった。