第1章 日輪を繋ぐもの
【怒り】
「……覚悟って、なんですか…?
何百人を守ったって…何よりも大切な妻のもとには物言わぬ姿になって帰ってくることの、何が覚悟ですか。
そんな覚悟など受け止めたくはありません!!
本当に大切に思うもののためならば、何をおいても生きようとしてくださるはずではないのですか!!!!!!」
ドン!!と壁に押し付けられたと思えば、
私の腕を締め上げながら不死川さんがギリリと歯を鳴らした
「テメェ…それでも煉獄の妻か!!!今までアイツの何を見てきたんだァ!?こんなこともわかんねェなら俺が今すぐお前もたたっ斬ってやらァ!!!!」
「やめろ不死川!!!」
「不死川さん!!!」
「この子は!!!!父の顔を見られぬのです!!!触れ合うことは叶わぬのです!!!これのどこが、大切にされていると思えるのですか!!!!!」
「なっ…!?」
「そんな、」
「嘘だろ…」
しのぶ以外の全員が言葉を失った
「ッ…この子、だとォ?」
「不死川さん、その手を離してください。
千聡さんは…煉獄さんとの子を身篭っています。本来ならば今は絶対安静の身です。」
不死川の手がダラリと下りた
「千聡ちゃん、ほんと、なの…?」
コクリと、力なく頷く
「このこと、師範は?」
「…昨日、文を」
「…そう」
蜜璃はゆっくりと歩み寄り千聡の手を取ると、寝台に近づき、温もりを失った手に重ねた。
「っ…」
思わず引いた手をぎゅっと握り直される。
「千聡ちゃん。
私ね、師範のこの手が大好き。
厳しくて、優しくて、あったかい手。
そして、大切なものを守る、強い手よ。」
何も言わない伊黒の首から、鏑丸がしゅるりと顔を出し、重なった手に寄り添った。