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日輪を繋ぐもの【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第1章 日輪を繋ぐもの






「…千聡さんより先に私たちの手で触れるのは、憚られまして」

しのぶが差し出したのは
幾度となく手にしてきたはずの清めの布だった。
ドン、と何かに殴られたように息ができなくなり、手が震えた。
幾度となく、やってきたことなのに。

手に取ったら認めてしまうような気がして。
認めてしまったら、私は、



動かない私に、しのぶが手を下ろし
静かに口を開いた


「…下弦の壱討伐後、上弦の参と戦闘になったそうです。
列車は脱線、横転したにもかかわらず乗客200余名に死者はなく、同行した癸の隊士らも生還しました。…信じられない力です。」






『君がもう誰も見送らずに済むよう、俺も俺の責務を全うする!』


見送らせないって、言ったじゃない。







「ぅう、し、は…しはん…っ師範…!!!」

「………俺は、信じない」

「…ったく、ド派手に凄ぇ男だよ、お前は」

「…お前の分も、醜い鬼共は俺が殲滅する」




もうあの日輪の双眸が私を映すことは
硬くて温かな手が触れることは
朗らかな声が屋敷に響くことは
金と朱の髪が日の光に煌めくことは

ーーーーもう、杏寿郎さんは


「………」


涙は、出なかった
上手く息ができない



鬼殺隊の柱として命を賭して人々を守った
誰も死なせなかったと

何人から讃えられようと関係ない。

医の道を歩む者として決して抱いてはいけない思いだとしても


それでも


それでも私は


名も知らぬ何百人よりも


あなたに生きていてほしかった


隣で笑っていてほしかった


お腹の子と、共に歩んでほしかった






「…っ!!!」

自分の中に湧き上がってきた感情が、何かわからなかった
ドロドロとして苦しくて
ここにいたら私は



フラフラと戸口に向かうと




「逃げるなァ」


「………」


「…煉獄の覚悟を、受け止めてやらねえェのかィ」


「…覚悟?」

覚悟って、なに

「アイツは、何よりもお前を大切に思ってたぜェ」


プツン
わかった。この気持ちは、


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