第1章 日輪を繋ぐもの
「そう、ですか、ここに、子が…」
「ひとつ、気がかりなことがあります。
先ほど診察した際に、僅かですが、出血が見られました」
「え…」
「決定的な診断ができないとはいえ…ご存知だとは思いますが、妊娠初期の出血はままあることですし、すぐにお腹の子の命に関わることはないでしょう。
ですがしばらくは、この屋敷で経過観察をします。その間は絶対安静ですよ。」
事実を端的に告げながらも、その声音は私を安心させようとする優しさに溢れていた。
「でも仕事は「そんなこと許すとでも?」…スミマセン」
しのぶがそっと、私のお腹に手を重ねる
「今は、この子の生きる力を信じてしっかり体を労ることです。
煉獄さんにお手紙をしてみては?きっと飛んで帰ってくると思いますよ」
がらんとした病室で、私は筆を執っていた。
あの人はどんな顔をするだろう。
口元に手をやり、いつも見開いた目をさらに大きくする彼の顔が脳裏に浮かんだ。
「ふふ、」
悩み抜いたけれど、一筆箋にひとことだけを綴り、鴉に託した。
まだ何の変化も見せていない腹にそっと手を当てる。
「…父上がどんな顔で帰ってくるか、楽しみね」