第13章 晴れのち思い出

｢夜まで時間がありますけど、他にしたいことはありますか？｣

したいことと言われると、確かに欲しいものはある。

『うーん。喫茶店とか服屋さん...かな？
でも買ってもまた段ボールに詰めないとやし...
これ以上、服が増えるのもなー。』

｢いいですよ。お手伝いはしますし、
幸い、置き場に困ることはないので。｣

『ほんま？まだ買うかはわからんけど、
もし、買ったときはお願いします！』

｢ええ、もちろん。目星はついてるのですか？｣

『行きたいのは服のリサイクルショップなんよね！
だから、掘り出し物があったらいいなって！』

｢これまた意外ですねぇ。リサイクルショップですか？｣

服と言っても只の服ではない。
休みの日にたまに行くリサイクルショップ。

『実は、着物なんよね。
アンティークの着物に...その...目がなくて...』

｢.....｣

『幻太郎？』

何かを考え込むように口を閉ざした彼が気になり、
声をかける

｢あぁ、すいません。想像するとあまりにも綺麗で。｣

『あ、想像してたのね。』

｢素敵なご趣味をお持ちですね。｣

凄くにこやかな幻太郎に少し笑いそうになる。

｢では、準備をして、デートと洒落込みましょうか。｣

そっか。デートか。
改めて言葉を噛み締めると、自然と気合いが入る。

『じゃぁ、準備してくるね。』

化粧をして、髪はツインの三つ編み。
服は...
着物でそんなに喜ぶなら、やっぱ着物かな。
私服のように着物を着る。着物警察に怒られても、
好きなことをする自分が好き。
でも、幻太郎に邪道だと言われないかな...
そう考えつつ、
紫のタートルネックに、丈が膝下まで黒のタイトスカート、紫のタイツ。ここまでは洋服だけど、
そこに
白地に黒の幾何学模様の小紋。帯は深緑の名古屋帯で銀座結び。帯留めは芥子色。黒のふわふわのベレー帽。
和洋折衷がここ最近はマイブーム。

部屋から出ると幻太郎は既に準備が出来てたみたい。

『ごめんね、待たせなよな！』

｢いえいえ、大丈...夫...｣

振り返った幻太郎が目を見開く。

『やっぱ、邪道？』

｢き...だ...｣

『え？』

｢綺麗です。とっても。｣

愛おしい物を見るよう目つきで、口角が上がった彼にホッとする。

｢好きなだけ買って差し上げます！！｣

『あれ、ご乱心！？』