第11章 嵐のち星空
そんな華奢な体のどこに、あの量の食事がはいるんだろう。
あまりにも美味しそうに食べるものだから、
明日用に作ったものも、テーブルに乗せてしまった。
すべて食べ終えた後に、申し訳なさげに
「すいません。明日の朝は小生が作ります。」
と眉を下げる姿は
叱られた子供みたいだ。
本人にはいわないが、
元彼だったらこれは嫌。あれは嫌。と当然のように言ってくる。
比べる訳では無いけれど、
こうも違うと、なんとも複雑な気分だ。
とはいえ、こうも嬉しそうな顔をされると
作りがいがあるというもの。
家事の分担をする際、
料理はぜひとも名乗り出たいものだ。
お風呂も済ませ、
2人でベッドに入る。
「こっちでやり残したことはないのですか?」
そう言われるが、インドア派であろう彼に言うのはどうなんだろうと、口を噤んだ。
「どうかしましたか?」
『えーっと. . 釣り...とか?』
「え?」
わぁ.. やっぱ嫌やったかなー。とおずおずと彼の顔色を伺う。
すると、嫌そうと言うよりは、驚いたような表情だ。
『あれ?変なこと言うたかな?』
「いえ、意外だったもので..つい、驚いてしまいました。」
『海見るの凄く好きやし、
ほら、都会って釣り禁止なとこ多いやん?
こっちは自己責任でってとこがほとんどやから、
友達と行ってハマったんよね。』
「なるほど。いいですね。
小生は初心者故、慣れぬことばかりやもしれませんが、
どうかお手柔らかにご教授願いますよ。」
『え?行ってくれるん?』
無理をさせてしまってるのではと心配になる。
「確かに小生はアウトドアは不向きです。
ですが、以前聞いたことがあるのですよ。
釣りは誰と行くかで楽しさが左右されると。」
『ほんまに、ええの?』
「えぇ。ルカとなら、どこに行っても楽しいですよ。
それに、恋人の趣味を共有するのも、新たに見つけるのも、とても大切な事だと小生は思います。」
恋人と迎える明日って、
本当はこんなに眩しくて待ち遠しいものなんだなと
初めて知ったよ。
どんな願いも叶えてくれる。
彼は私の流れ星みたいだ。