第10章 雨のち嵐
チェックアウト当日は慌ただしかった。
幻太郎は名残惜しそうにはしていたけれど、
乱数と帝統は幻太郎が居ないと帰れない。
すぐに連絡します。と
慌ただしく、嵐のように帰って行った。
それはもう、
悲しむ隙もないくらい。
それでも、賑やかだったあの数十分前が、
今では
時計の規則正しい針の音。
冷蔵庫や冷暖房の風の音。
換気扇の音などの
所謂ホワイトノイズのみだ。
なんとなく落ち着かなくて、
置物と化しているテレビをつけ
電波によって流れてくる人の声を聞きながら
荷造りを始める。
聞き覚えのある声が聞こえてきて
聞き流していただけのテレビに目を向ける。
『幻太郎...?』
次の日の出勤で
私はといえば
自分の世間の疎さに自分で呆れていた。
ディビジョンラップバトルのことも初めて知った。
SNSも全然してないから..というかやり方があまりわからない。
それ故に、
とても有名なことを昨日テレビを見て知ったのだ。
H歴に変わって、言の葉党が出てきてから、色々変わってますよ。
と仲良しの男性店員にも呆れられた。
『いやー。時代が変わったくらいで、
自分自身、生活が劇的に変わった訳ちゃうから、なーんも気にしてなかった。』
というか、
そもそも機械音痴な私からすると、
その苦手な機械に
SNSなる謎のアプリなるものを入れて、
更にそれを弄り回し調べるなんて
高等な技術。
とてもではないが、できない。っというか
面倒臭いしか勝たない。