第3章 曇のち急展開
まだ仕事モードが
心の片隅にある分、涙は割とあっさり止まった。
これ以上醜態を晒すわけにはいかない。
『すいません。急に...』
「いえいえ。小生は何も見てませんよ。ただここであの二方を眺めていただけです。」
嘘ばっかり。ほんと、優しい人だ。
好きだな。
でもこの思いを伝えることは
出来ない。
私はこっちに住んでいて、
相手は旅行中。
そして、今日をもって会うことは無くなるだろう。
恋に臆病になっている分、
自分からのアプローチなんてとてもじゃないが出来ない。
でも今ならこの気持ちをボヤっと誤魔化すことが出来るかもしれない。
優しい人だった。と過去の人にすることが出来るかもしれない。