第1章 晴れのち出会い
しょうがない。
だってやる気がないんやもん。
一ヶ月前に職場に退職届を出したものの、
1度辞めると固く決めて実行した後は
どうにもこうにもやる気がでない。
キリがいい来月の締め日にするか、
今月末までにするか。と聞かれた時に、
どうして「どちらでも!」なんて言ってしまったんだろうか。
アパレル店員なんて
大多数の女の子が
憧れを持ち、キラキラした世界で、
容姿端麗なマネキンみたいなお姉さん、お兄さんが居て。なーんて思う人も結構いる。
私も最初はそんなイメージで入ったのだ。
うちのブランドは
メンズもレディースも扱った
ユニセックスブランド。
だから男性のお客様も多数御来店する。
男性のスタッフに話しかけるお客様も居るが、
店長、副店長を含めた女性スタッフは
どことなくキャバクラみたいな接客。
どことなくその気にさせるみたいな感じ。
子連れのお客様を見ると、
お子様可愛いですねー!とハートが飛んでるんじゃないかなと言う勢いで行くが
子供が苦手なことも知っている。
そして、家庭があるからと
時間前にはとっとと帰ってしまうのだ。
もちろん、タイムカードは時間通りに押すように命じられた上で。
お疲れ様ですと心の中で中指を立てながら、にこやかに見送れば、
冒頭に戻る。やる気がない。帰りたい。
なんで末までに辞めると言わなかったんだろう。と後悔が押し寄せてくる。
VMD(マネキンの着せ替えや商品配置)を押し付けられた男性店員の愚痴を聞いて
わかるわー。と頷く。
そして、閉店まで2人でやる気のないままくっちゃべって
閉店後にお疲れ様のタバコを吸って帰る。これが仕事の時のルーティーンだ。