第4章 初恋ファシネーション!【ジェイド】
「さん、おはようございます」
「あっジェイド先輩!おはようございます」
小走りでこちらに寄って、柔らかく微笑むさん。
小柄で華のある雰囲気の彼女は、どこか美しい色をした熱帯魚を彷彿とさせる。
「今日は随分と早く学園にいらしたんですね?」
「そうなんですよ、昨日課題を教室に忘れて寮へ戻ってしまって…」
「ふふふっ、さんにもそんなおっちょこちょいな一面があったとは…少々驚きました」
けらけらと笑う声
高い位置でくくられた動く度に揺れるポニーテール
少し大きめの制服
いつもと変わらない、天真爛漫な彼女。
だけど僕は、彼女の決定的な違和感を感じずには居られなかった。
「…あの、何も無いならいいのですが…」
「はい?…どうしました?」
「…腕に巻かれた包帯や、首に貼られたガーゼは一体どうしたのですか?」
「あっ…// 全然なんでもないですよ!」
彼女は少しだけ顔を赤らめて、あからさまに動揺している。
…これで、隠せているつもりなのだろうか?
「…誰にやられたんです?」
「っえ…ジェイド先輩…?」
「見せてください、その包帯の下を。」
「やっ…!!ダメです、離してください…!」
嫌がる彼女を壁に追い詰め、無理やり包帯を解く。
…刹那、見なければよかったと後悔した。
白く陶器のような美しい肌から浮き出ていたのは、見慣れた歯型。
そのまま首のガーゼを1枚ずつ剥がしてみると、赤く腫れたキスマークがつけられていた。
「…さんっ…これは…」
「~~~~~っ!////」
紛れもない、フロイドのものだ。
__まるで自分のものだと見せつけるように、服で隠しきれないところにつけてある。
"ジェイドってぇ、ほんとーに小エビちゃんのこと大好きだよね~?♡"
先日そう言われたフロイドの声が、頭の中で響く。
あの時はどうして急にそんなことを?と疑問に思いましたが…
__嗚呼、こういうことだったのですね?
僕が初めて恋焦がれた儚い少女は、既に自分が汚したのだと…
あの時、そう言いたかったのですね。
「ジェイド先輩…っ、誰にも言わないで…っ」
ショックのあまり呆然としていると、目の前の可憐な華の瞳からはポロポロと大きな雫が流れてきていた。