• テキストサイズ

it!《気象系BL》

第12章 遥



S




少し、口を尖らせた顔に、あ、怒ってんな、と思った。


そりゃ、そうか。
あまりにも俺が自由すぎだったのは認めるよ。


でも、この数秒のやりとりで、俺は確信した。
長年のつきあいの勘、みたいなものだ。


俺は、渡されたビールをカウンターに置き、ぽつんと佇むその華奢な体を抱き寄せた。


「なっ……」


抵抗されかけた体を、離すまい、と、ぎゅっと抱きしめると、徐々に力は弱まり、大人しくなる。

俺は、あいつのふわふわした髪の毛に頬を寄せた。
久しぶりに抱き寄せた体は、相変わらず細い。
そして、いい匂いがする。


俺は静かに詫びた。



「ごめん」

「…………」

「ごめん」

「…………なんに謝ってんのよ」

「お前に」

「………そうじゃなくて」

「勝手でごめん」

「…………あのさ」

「かず」

「聞いてる?」

「……………ごめん」

「…………………」

「待たせてごめん」

「………………」



黙りこくったかずの額が、こつん、と俺の肩口にのった。


俺はかずの小さな背中をさすって、ごめん、と詫び続けた。


そして。


「………愛してる」


小さく囁くと、かずの体は分かりやすく硬直した。
/ 61ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp