第2章 虹
JUN
「うん。すっげーいい気分」
ふわふわした気持ちで頷くと、翔くんは、仕方ないなといって、お兄さんの顔で笑った。
その翔くんの赤い唇がすごく色っぽくみえて……。
俺は、そっと頬を寄せた。
唇が触れるギリギリで、翔くんは、そんな俺をからかうように問う。
「……なんだよ」
「キス。したい」
「酒くせぇぞ」
「二人とも同じの飲んでんだから、同じ匂いじゃん?」
「そうだけど……」
余裕ぶってたくせに、照れるのを隠すように視線をはずすのは、この人の癖。
俺は、わざとにシャンパンを口に含み、そのまま翔くんの唇に自分を重ねた。
翔くんは、最初、びくりとしたように固まったが、そのあとすぐ大人しくなり、俺が口移しで注ぐシャンパンを受け入れた。
ゆっくりと流し込みながら、彼の表情をみると、半分とろんとした瞳。
ああ……スイッチはいったかな?
コクンと、喉が鳴ったのを確認して、そのまま舌を差し込んだ。
「……っ……ん…ん……」
甘い声が漏れだしたのは、もういいよ、の合図。
俺は、キスを繰り返しながら、グラスを置き、翔くんの持ってるグラスもとりあげた。
すると、彼の両腕がするりと俺の背にまわされて。
俺はゆっくりと体を倒しながら、翔くんの体をソファーに沈めた。
翔くんは、ふっと笑う。
「俺、ここでおまえに食べられるの?」
「そうだよ。もう我慢の限界」
応えて、もう一度深くキスをする。
一日を通して、あなたの可愛さと、美しさを全世界に配信した。
ほんとのほんとは嫌だったけど、そこはしょうがないから、我慢するけど。
嫉妬深い心の狭い俺に、今から俺だけの翔くんを見せて?
シャツのボタンをはずしながらお願いすると。
「……バカだな。嫉妬なんてする必要ねーだろ」
口を尖らせて、恥ずかしそうに微笑んだあなたは、小さく言った。
俺の一番はお前なんだから。
fin.