第2章 虹
SHO
無事に俺たちの日が終わった。
久しぶりの演出に、寝食を削りぎみに没頭するあいつを案じながら、全員でたくさんの企画を考えて、準備して。
いろいろと問題が取り沙汰されたライブの事前収録も、いざ配信が終わってしまえば、ネット上は好意的な感想であふれかえってて一安心だった。
俺たち五人は、実にうまいシャンパンで乾杯して大成功を喜びあい、夜遅くそれぞれ帰途についた。
「……飲み直す?」
帰宅後、潤が、新たな高そうなシャンパンとグラスをテーブルに並べた。
ソファーで、今日のファンの人の反応を検索してた俺は、
「いいね」
と、顔をあげた。
潤は嬉しそうに、はい、とグラスを俺に差し出し、シャンパンを注ぐ。
シュワシュワと炭酸が弾けるとともに、よい香りが鼻をかすめる。
うまそ、と、呟いて、潤にも注いでやる。
「とっておきだよ」
「そうだろうな。高そうだ」
お疲れ様、と、二人でグラスを軽くあわせ、口をつけた。
「うわ……うま」
「でしょ」
微笑んだ潤は、よいしょ、と俺の隣に座った。
グラスを傾ける綺麗な横顔を眺めて、ぽつりと、聞く。
「……疲れてないか」
「なんで。そんなの翔くんだって一緒じゃん」
「いや、おまえは、これまでも俺よりいろいろ動いてたし」
「そんなの……しれてるよ」
ふふっと笑った彼に、ぐっと肩を引き寄せられた。
俺は、そうか?と言って、そのまま潤に体を預けた。
ああいった生配信は、気を使う。
言っちゃいけないこと。
やっちゃいけないこと。
この世界に身をおいてから、わりと長い俺たちは、当然分かっていることだが、それでもやっぱり、ふとしたはずみに感情が顔にでないか緊張するものだ。
特に、好き嫌いの顔はばれやすい。
「しかし、今日のお前は、マジひやひやしたぞ」
「なんで?」
「なんか……俺を好きなのが、顔に出すぎだ」
仏頂面でシャンパンを飲むと、潤は声をたてて笑った。
「仕方ないじゃん。好きなんだもん」
「もう少し隠せよ」
「無理です」
へらっと笑う潤に、俺は不審な目を向けた。
「お前、酔っ払ってる?」