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it!《気象系BL》

第12章 遥



K


『今から行く』



小さく震えた傍らのスマホに気がつけば、長いこと動いてなかったアイコンが目に入った。


心臓がどくっと鳴り、今まで忙しく動かしていた指が思わず止まる。


………今から?


時計を確認すると、もう夜も深い。

今からっていっても、どこからの出発なのか、何時に到着予定なのか。
このメッセージは、肝心な詳しい情報をすべてすっ飛ばしてる。
俺は、いったい今からどんな気持ちでいたらいいというのだ。

俺は手にしていたリモコンを、床においた。

画面からは、今だ続くゲームの音楽が流れ続けるけど、プレイの途中にも関わらず、迷わず電源ボタンに指をおいた。


プツッと画面が真っ暗になる。と、同時に少し不安げな俺の顔が映り、目を逸らした。


ドキドキと心臓が走り出す。



………………会える。



この日までどんなに焦がれようが、この天邪鬼な性格が災いして、会いたい、と、口にすることができなかった。

何よりも、やっと手にした自由な時間で飛び回ろうとしているあの人を、この場所に縛り付けることは、俺にはできなかった。

結果。

休止以降、俺たちは、恋人、という関係のはずなのに、そんなことまるでなかったように、連絡を取り合うことが、ほぼなくなり。
こちらが連絡をとろうとしないものだから、向こうからも来る訳もなく。

時間がたつにつれ、忘れられていたらどうしよう。
もうお前なんかいらないと言われたらどうしよう、とネガティブなことしか考えられなくなり、ますます連絡をとること自体を避けるようになってしまった。


そんなこんなで、いつのまにかあの人の個人のアイコンは、俺のスマホの奥底に沈みこんだ。

そのうち、時々、グループLINEに一言、二言現れたとき、みなで彼の生存確認ができたことを密かに喜ぶこと以外、接点はなくなった。


…………もしも顔をあわせたら。
重いセリフを投げつけてしまいそうな自分が怖い。



俺はあなたの何?
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