第6章 陽
A
今年のバレンタインは日曜日だから、学校でそわそわする必要がないのはありがたい。
彼女がいない身分には、共学に通ってる以上、女子を意識するなというほうが無理というものだからだ。
朝から、クツ箱や机を確認したり。
日中は、なんとなく一人になるように、用もないのに階段を登ってみたり。
自分でもバカだなぁと思うけど、なんとなくチョコレートをもらう事が、男としてのステータスを高くみせれるみたいなところがあるような気がして、毎年同じことを繰り返してしまう。
まぁ……結果、毎回惨敗なんだけど。
「どうしてさ、俺みたいないい男にチョコレート持ってくる女の子いないんだろうね?」
「……知るかよ」
ベッドに転がったまま、あーあ、と、ぼやくと、お山座りで携帯ゲームをしてる、幼馴染みのニノが、冷たく一蹴した。
「だってさ。俺、バスケ部のキャプテンよ?モテるでしょう、普通は」
「……だから知らねぇって」
うるさそうに返されるが、ニノが冷たいのはいつものことだから、俺は全然気にならない。
家で一人でいたらむなしいから、こうしてニノの部屋で過ごしてる。
だからニノの毒舌っぷりも想定内。
俺は、あーあ、とベッドの上でのたうちまわった。
……ちなみに、我がバスケ部のマネージャーは、うちのエースの山田と、去年くっついた。
密かに、いーなと思ってた子だったから、結構ショックで。
そのときもニノの家でぼやいたっけ。