第1章 くもり所により快晴
東堂先輩と図書室で話したあの日をきっかけに一つ、変化したことがある。
学校内でもレースでも、新開先輩に声援を送ると反応して手を振ってくれるようになったのだ。
……新開先輩の隣にいる東堂先輩が。
ファンクラブの子たちへと対応と同じように、ニコリと微笑んで私に向かって手を振ってくれる。
相変わらず、肝心な新開先輩は全く反応してくれないけれど。でも、これは当たり前だから。それでも新開先輩を応援しようって決めたから!今日も精一杯の声援を送る。
「諦めが悪いね、君も」
「うるさいな。健気って言ってよ泉田くん」
「新開さんは迷惑してると思うけど?」
「良いじゃんこうやって遠くから声援を送っているだけだし!」
「それが迷惑だということだろう」
「もう!自分は新開先輩の傍に居られるからって自慢すんな!」
ふと隣から話し掛けられて其方を見れば、いつも新開先輩の傍をウロチョロしてる泉田くんで。
泉田くんとはクラスが同じだったりして結構仲がいい。新開先輩のことに関して以外は!
「いいもんこうやって新開先輩の姿を遠くから見てるだけでも…今から走りに行くんでしょ?新開先輩怪我しないようにちゃんとフォローしてよ泉田くん!」
「…わかってるよ。君に言われるまでもないな」
ポンと肩に手を置いてから新開先輩の方へ向かって行く泉田くんを羨ましそうに見つめてから、練習コースのゴール付近に移動する。
このゴール付近には部員全員が通るだけあって東堂先輩のファンクラブの人たちも、我が新開先輩のファンクラブも多く陣どっている。
腕時計で時間を確認すればそろそろ新開先輩たちが戻ってくる時間。今か今かと待っていると、東堂先輩のファンクラブの人たちが騒ぎ出したのでコースを見れば東堂先輩が早くも戻ってきたようで。
いつもの高笑いをしながらファンクラブの声援に手を振って応えてる。
あー羨ましいなあ…
そんなことを思いながら東堂先輩を見ていれば、ビシッと指をさされて思わず固まる。