第1章 風の噂
「なに?」
「僕に、自分のベッドで寝ていいよとは言わないんだ?」
言われてから、ああ確かにそうすれば問題は無いよなと思い至り、ウェンティの顔を見てふと気づく。
「一緒に寝る?」
面白がるような表情で聞いてくる。話が飛躍しすぎだ。からかわれていることに気づいて、恥ずかしさとむっとした気持ちが込上げる。
負けてられないと、いらない対抗心が燃え上がる。
「ん〜...ウェンティと一緒に寝たいな...、いい?」
わざとごろんと仰向けになり、喉筋を晒した。
やり過ぎたか、笑われるかとも思ったが、ウェンティが一瞬固まったのを見てしてやったりとほくそ笑む。
けれど次の表情にあ、まずい、と頭の警鐘が鳴った。
ウェンティはすっと目を細めて私の喉を指でなぞり、そのまま鎖骨、デコルテと下がっていき、指は胸の上で止まった。
「一緒に寝よっか。忘れられない夜にしてあげる」
急に下がってきたウェンティの頭が耳元で囁いたかと思うと、もうウェンティの体は私を覆っていて。
女の子のように細いのにれっきとした男の子なんだと感じさせられる程、くっついた体は熱かった。