第1章 ここは私の世界じゃない
彼女はこの世界にいたのかいなかったのか。それを確かめる為の物語かもしれない。
信楽朱里は、平凡に過ごしていた。特別目立って秀でるものがあるわけではないし、勉強も出来る方ではないが友人と楽しく過ごし家族と楽しく過ごし、良い感じの仲の良い男友達もいた。告白したらと友達に背中を押されて無理だよ、なんて笑いながら話をしていた。
そんな彼女が体育の授業中に、男子の蹴ったボールが後頭部に当たり気絶をした。そこから彼女の世界は変わった。
「っ…頭、いた…」
目を覚まし、視界も定まってない中起き上がろうとすると頭が傷んで起き上がるのを断念する。何度か瞼を開いて閉じて視界を安定させようとして気付く。ここは何処だと。
「え!?待って、何で!?いつの間にうちの学校木造になったの!?っー!あ、たま…」
ズキズキと痛む頭を押さえながら不思議に思いながら辺りを見渡す。保健室、と言われれば納得できそうだがそれにしては物が少ないしとにかく木造の部屋に疑問が湧き出る。学校の保健室は白い壁に天井。そもそもコンクリート造りの筈であった。なのに今朱里がいる部屋は全面木造。部屋には本棚と薬品の入った棚。小さな机にベッドが3つほど。部屋の隅には点滴等を支える支柱がいくつかあった。
「まさか、病院にまで連れてこられたの?」
後頭部に衝撃が来た事と、周りが叫んだのは覚えているがそれ以外は何も覚えていない。大方誰かの蹴ったボールが当たったのだろうが、それで人間は本当に気絶するのかと感心した。恐らく気絶して中々目が覚めないとかで最寄りの病院に連れてこられたのだろう。暫くすれば看護婦さんなりお医者さんなりがくるだろうと、再びベッドに寝転がる。どうせならこのまま親が迎えに来るまで寝ていようと、目を閉じて暫くの時が経った。ドタバタと足音と声が聞こえてくる。心配した親が走って来たのかと思いきや様子がおかしかった。親の声も友人の声もしないのに自分の名を呼んでいた。
「朱里を1人にするな!また起きたら文句言われるぞ!」
「でも2人っきりだとそれはそれで怒るんでしょ!」
「当たり前だ」
「理不尽だなぁ…」
「朱里大丈夫かなぁ」
4人ぐらいの男の声が聞こえてきて、そして部屋の前で止まる。扉が開かれて再び朱里は気絶しそうになった。