第3章 面影のない君
驚いたからか、徐々に私の頭は冷静さを取り戻し、今のこの状況に頬が熱くなっていく。
「り、凛…」
だって私は凛の腕の中にいて…布越しに伝わってくる相手の体温と匂い、がっしりとした体つき。
緊張しないほうがおかしいだろう。
それに……。
水泳部の誰よりも凛の体は鍛えられていて…。
「…お前小さくなった?」
「り、凛が育ちすぎたんだよ!」
緊張しないようにと言葉を返すも、逆に意識してしまい声が裏返ってしまいそうになった。
後頭部にある凛の指がぐっと二人の間の距離を近づけてくるので、思わず胸板を押し返す。
「…あ、わりぃ」
「ううん…」
特になんとも感じてない凛に、私は赤くなっているだろう顔を隠すようにしながら距離をとった。