第1章 水泳部と少女
質問の答えを求めて2人の顔を見ると、どちらも何故か少し顔色が曇っていた。
「……?」
その意味が分からない私を一瞬見て何かを言いたげな真琴くんだったが、その口はすぐに閉じられてしまった。
「水に入りたかっただけだ」
答えない真琴くんの代わりにハルくんがスパッと言葉を発した。
ハルくんが放った言葉の裏にはそれ以上は聞くなと言う意味合いを持っているように感じる。
重くなった空気に耐えきれずに顔を背けたと同時に遠くから電車のライトが見え、幾らかほっとした。
「…じゃあ、送ってくれてありがとう」
「ううん、気をつけてね」
真琴くんの言葉を背中で受け止めながら電車に乗り込んだ私は、すぐに座席に腰をおろした。
扉が閉まってガタンッと車内が揺れたと思えばすぐに電車は走り出す。
一瞬視界に入った2人。
ハルくんはじっとこちらを見つめ、真琴くんは困ったように微笑んだまま手を降っていた。