第1章 水泳部と少女
「ハルっ、いい加減にしないと本当に風邪引くよ?」
「…引かない」
「引くの。早く出ておいで」
「………」
真琴くんの言葉に渋々と言った感じで、ハルくんはやっと水の中から上がってきた。
「ほら唇真っ青になってる」
「…寒くない」
ぶんぶんと頭を振って水滴を飛ばしたハルくんとばちっと視線が合う。
「ジャージ、ありがとう」
「別にいい」
そっけないハルくんは渚くんからバスタオルを受け取るとガシガシと頭を拭いている。
…水泳部みたら殴ってやろうと思ったけど、助けてもらったし見逃してあげる。
それなりの理由を付けて、私はパイプ椅子から立ち上がった。
「私もう帰るね」
「…えっ」
それだけ告げると私はそのままプールを後にした。