第5章 鉄骨娘
時刻は午前10時30分を過ぎた頃。
ガヤガヤと騒がしい雑踏と話し声。時折響く車のクラクション。
月瑠は初めて原宿に来ていた。
高専がある所は人通りもなく自然が豊かだったのだが、少し都心へ近づけばこの人だかり。五条と共に仙台へ行った時との人の差に唖然としてしまう。
「……人多くて酔いそう…」
「大丈夫かよ月瑠。アイス食うか?」
「いらない…」
月瑠は見慣れない人の数の多さに圧倒されまくっていた。
虎杖だって東京には慣れていない筈なのに割と普通……
などでは無く、月瑠のように人酔いはしないがアイス片手に全力で満喫しようとしていた。
「てかさー、一年がたった4人って少なすぎねえ?」
「じゃあオマエ今まで呪いが見えるなんて奴合ったことあるか?」
「…ねえな」
「それだけ少数派なんだよ、呪術師は」
「でも、私達で4人目って言ってなかった?」
「あぁ…入学は随分前に決まっていたらしいぞ」
月瑠たちは、他愛もない話で時間を埋めていた。
「……五条、まだかなあ」
「集合時間だし、すぐ来るだろ
……ってかあれじゃね?」
ざわざわとした人の声に混じって流れる駅のアナウンス。
電車が到着し、駅から出てくる人の中に見える高身長の白髪。見る人が見れば、すぐに分かる。
「私、呼んでくるね」
「おう」「ああ」
五条を見かけ、場所を知らせる為一応呼びに行く。
がしかし
「ちょっと、ちょっとそこのお姉さん」
「……?」
たった数十m。距離としてはそう遠くない位置で、唐突に話しかけられた。