第8章 雨後※
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虎杖へメスが届く寸でのところだった。
聞こえてくるはずのない声に、五条と家入と伊地知は一斉に振り返る。
「‥‥!?月瑠さん‥!?え、え‥!?」
「目が覚めるのはまだ未定だった筈なんだが‥」
意識不明だった筈の月瑠が唐突に現れて
伊地知は驚きまくり、家入は不思議そうにしていた。そんな二人とは違い
「‥月瑠、おはよう」
「‥おはよう、悟。‥‥起こしてくれて、ありがとう」
「‥!ふ、どういたしまして。凄くよく寝てたね」
「あれ、寝てたって言うかな‥?」
五条だけは彼女が目が覚める事など想定済みで。
月瑠も自分を起こしたのは彼だと
なんとなく、上手く言えないが五条を見てそう感じた。
起きて早々意気投合している月瑠たちに伊地知はあり得ないとばかりに口をパクパクさせている。
「自己紹介がまだだったな。
私は家入硝子、高専でまぁ、医療の担当だ。‥で、待て、とはどういう事だ?」
「初めまして。
‥‥悠仁は、まだ死んでいないので」
「!‥へぇ‥?」
「何言ってるんですか月瑠さん‥!虎杖君は、心臓丸々無くなってるんですよ‥!?反転術式でも心臓が存在しない以上‥」
「‥そんなの、すぐに作ればいい」
「なにを‥‥っな!?」
月瑠はスタスタと虎杖の側へよれば、手をかざし呪力を操作する。
負のエネルギーから正のエネルギーへの変換。
みるみる内にぽっかり空いていた胸の穴は塞がっていき、臓器が形成される。
それはもはや人間業の域を超えていた。彼女が半分呪いだからこそ、造ることができたのだ。
信じられない光景に伊地知はかけていた眼鏡の付け外しを繰り返す。
「今の悠仁の場合
やっぱり心臓を治すだけじゃ駄目、か‥。
‥‥‥問題は精神。魂の有る所。
今から私の術式を使う」