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get back my life![アイナナ]

第1章 落ちて拾われて


「では、話は私から説明させて頂きます。こちら、明日から小鳥遊事務所の社員になる山中一華さんです。急な決定で申し訳ないのですが、彼女の家が決まるまでこの寮の三階に住んで頂きたいと思っています。勿論、皆さんの許可を頂けたらの話なのですが」
 丁寧な紹介と説明を紡さんから頂いて、私は軽く頭を下げる。
 私からは何も言う事がない。
 むしろ、強くお願いしても失礼だし、否定的な事を言って屋根付きの寝床を失うかもしれないリスクも負いたくない。
 沈黙は金なり、ってね。
 でも勿論、質問とか要望にはできるだけ正直に答えるつもり。
 見たところ、この寮に居る男の子達はみんな若い。
 女の子が一人も居ない事と、想像以上にみんな格好良い顔立ちをしているところが気がかりだけれど。
 紡さんの言葉に付け足すように、今度は三月くんが話してくれる。
「実は、マネージャーたちが着く少し前に、鳥居先生から連絡があってさ。山中さんは今日東京に来たばかりで、訳あって実家から出て来たんだって。しかも貧血になって一度鳥居先生の病院に運ばれたらしいんだ」
 貧血になったなんて聞いてないけど、そうだったのかな。
 首を傾げる私を心配してくれたのが、茶髪に赤い瞳の男の子と、銀髪に青い瞳の気だるげな少年。
 素直そうな二人に、今は平気だと伝えると、良かったと言って安心してくれた。
 実家を出ている事を気遣ってくれたのは、銀髪に紫の瞳の青年。
 色々と大変なのだろう、と案じてくれた彼は、気配り上手なのだろう。
 女が一人で東京へ出て来た事を、すごいと褒めてくれたのは金髪碧眼の青年。
 これには苦笑いで返すしかない。
 だって、私はただ滑って落ちただけだから。
 そして、茶髪に銀縁眼鏡の男性は、静かだけれどいつでも私を追い出せそうな姿勢を保っていて。
 和泉くんは、最初と変わらず私を歓迎してないのが分かる。
 さあ、どうしよう。
「いーじゃん。家ないんだろ? ここ住めば?」
「うんうん! きっと楽しくなるね!」
 最初に許可してくれたのが気だるげな少年。
 続いて赤い瞳の元気な少年だ。
 良かった、歓迎してくれる子も居て。
 ほっとしたのも束の間、遠慮がちに。
「さすがに、女の子が一人この寮に入るのは、まずいんじゃないかな」
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