第57章 最後の全中
「名前っち!大丈夫っスかー?」
『涼太、あたし怪我人』
「オレ心配だったんスよ!怪我したところちゅーしたら治るかも」
『ねえほんとやめて』
涼太ってこんなバカだったっけと、元々怪我して痛い頭が別の意味で痛くなった
「もう大丈夫なのか?」
『全然、痛い』
「そんなサラッと言うなよ!」
「…ならば寝てろと言いたい所だが、名前のことだからどうせ拒否するんだろうね」
「名前ちん頑固だからね~」
『そうですよ。どーせ拒否しますよ』
征十郎と紫原の言葉にイラッとして視線を別の方向に向けるとテツヤが視界に入る
いつもより申し訳なさそうにしている彼はあたしの頭に巻かれた大げさな包帯を見て、目を伏せた
「名前さん」
『ん?』
「すみませんでした。女性の頭に傷をつけてしまって…」
『何でテツヤが謝るの?』
「…え」
『だって殴ったのテツヤじゃなくて相手チームの双子の片割れじゃん。悪くないのに何で謝るの?』
「それは、ボクがしっかり避けられたら…」
俯いているテツヤの声の大きさがだんだん小さくなっていく
彼のせいじゃないのに責任感じてんだなと納得して水色の髪の隙間からおでこにデコピンをした
「微妙に痛いです」
『だってテツヤがウジウジするから』
「でも」
『テツヤがそんな責任感じなくていいの!申し訳ないなら荻原君との念願の試合を楽しんで来て!』
「名前っち男らしいっス…」
『前から言ってるけど、あたし女だからね?』
決勝戦の準備が進む。相手校のベンチから視線を感じて何かと向くと荻原君が心配そうな顔をしてこちらを見ていた
大丈夫という意味を込めてニコリと笑い、頭の上に大きく丸を作ると彼も笑っている
全中でしか会ってないのに心配してくれて優しい人なんだなと思いながら、ベンチに腰掛けた