第17章 駆られる ※
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ガチャ…
足首に、金属の冷たさを感じ目が覚めた。
冷たいだけではない…何か…重い……
「っ!!」
両の足首それぞれに付けられた枷が視界に入り、やっと頭が覚醒した。
辺りは薄暗く、は壁にもたれ座っていた。
左手首は頭の横で固定され、こちらも枷がはめられていた。
ドクドクと鼓動が早くなる。
どこかの地下の座敷牢だろうか。
ひんやりとした空気は滞留し澱んでいる。
「杏寿郎さん…」
先程まで一緒にいたはずの杏寿郎がいることを期待し見渡すが、人の気配はない。
と、思ったが、
「…っ!」
は息を飲んだ。
俯いて目を閉じ、再び開いたその視界に黒い足袋をはいた足が映ったからだ。
すぐには顔を上げられなかった。
目の前の"モノ"が人とは思えなかったからだ。
背中にあるはずの脇差に右手を伸ばすが、それは宙を撫でた。
「ちゃん」
「…ぇ……」
「やっと会えた」
名を呼ばれ驚き顔を上げると、優しい顔をした男の鬼が微笑んでいた。
(鬼…戦わなきゃ……日輪刀…)
体をひねり刀を探すが、どうしてか体は鉛のように重く頭も回らない。
「おっと…」
倒れかけた私の上半身をその"鬼"は支える。
その、普通ならありえない行為を受け入れることなどできず、私に触れる腕を振り払い睨んだ。
それなのに、どうしてか鬼は悲しそうな表情になり
「ちゃん、俺のこと覚えてない?」