第16章 暁闇の元
*
杏寿郎さんの姿が、縁日の灯りに消えてゆく。
いつもなら、汚れてしまった浴衣を早く洗わなければ…なんて思うけど、今はそれどころではなかった。
…お祭りの雰囲気は不思議なものだ。
なんだか、現実世界ではないような気さえする…。
今日のことが、実は夢でした、なんてこともあり得そうな程…。
もっとよく見たい。そう思い指輪を指から外してみる。
キラキラと光を反射したダイヤモンドが本当に美しい。
これが杏寿郎さんから贈られたものだなんてすごく嬉しい。
その時…
「ん゛ん゛…!!!」
突然、後ろから布のようなもので口鼻を覆われた。
ツンとした刺激臭。
は腕を橙の光に伸ばすが
宙を掻くだけでそれは掴めない。
杏寿郎さん……
*
「?」
冷えたラムネと手ぬぐいを持って戻ると、そこにの姿はなかった。
代わりに見つけたのは、長椅子の隙間にキラリと光る、何か。
近づくとそこには、に贈ったはずのあの指輪が挟まっていた。
「!!!!!」
地面に転がったりんご飴は、毒々しい程に紅かった。