第3章 尊い人
私は本当に稔さんが大好きだった。
恋愛感情ではなく、敬愛の意味でだ。
どんな時も常に味方でいてくれ、至らぬ点は厳しく叱ってくれる。
彼と過ごす毎日は笑顔に溢れ、とても楽しかった。
もし兄がいたらこのような感じなのかと、私はよく想像し、そのたびに顔にだらしない笑顔を浮かべては稔さんに気持ち悪がられていた。
でも、どうして幸せな日々は突然終わってしまうのだろう。
なぜ、何の前触れもないのだろう。
"鬼" さえいなければ…
私たちの、過酷も楽しい日々は
明日も当然の如く来るはずだったのに。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
稔さんは意外にも甘党らしい。
私たちは今日も、街の甘味処にいた。
わたしはあんみつ、稔さんはみたらし団子。こればっかり。
年明けの冬。天気は良く、頬にささるシャキッとした冷たい空気が気持ちよい。
稔さんの鎹鴉がやってきて、私たちに告げる。
「ミノルっ、! トモニ、ホクホクトウへムカエっ!!カーァ!」
私と稔さんは表情を固くする。
「フクスウノオニ、シュツゲンノホウコクアーリっ!」
(複数…?鬼は群れないのではないの?)
「、行こう」
その鬼について思考を巡らせていた私は稔さんの言葉にハッとなり、残りのあんみつをかき込んだ。