第13章 【番外編】碇草 ※
(視点)
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「ふっわあああああっ!!」
私は布団から飛び起きた。
「夢っ!!!」
夢だった。なんて夢をみてしまったのだろうわたしは…!
さっきまで見ていた夢はあまりにも現実的で、いやっ、でも絶対現実じゃないのだけれど、
心臓がばくばくと脈打ち、浅い呼吸で酸欠になりそうだった。
とにかく落ち着きたくて、起き上がり部屋の中をうろうろする。
夢…夢で良かったわ…。
え?わたし杏寿郎さんのこと好きなの?
夢の中で好きって……
いやいやいやいや、血鬼術できっとおかしくなっていたのよ、絶対そうよ!!
ぶつぶつと自分を納得させようとしていたが、全然落ち着かない。
外の空気を吸いたくなり、襖をあけて縁側に出る。
「う~ん…」
目一杯両腕を上に伸ばし、伸びをする。
もう太陽は高い位置にある。
ちょっと寝すぎてしまったようだ。
夢のことを頭から振り切るように、また縁側をうろうろしていると…。
「おはよう!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
廊下側の襖がスパッと開き、そこには杏寿郎が朝餉の盆を持って立っていた。
吃驚して、裸足で寝巻きのままだったが
庭の向こう側の植木まで飛び、陰に隠れた。
さながら海老のようだったと思うし、
今の早さは私史上で1番だったと思う。
杏寿郎さんの登場に驚きすぎて大声を出してしまったからだろう、バタバタと人の足音が近づいてきた。
「大丈夫ですかっ!?」
「何があったのですか!」
「あっいやっ、俺がを驚かせてしまったようで…」
杏寿郎さんが困っている。
でも、襖を開ける前に声くらいかけてほしいわっと、少し怒りたい気持ちもあった。
杏寿郎さんはばつとして困らせておけばいいの。
騒ぎが静まるまで、ここに隠れていよう。
あんな夢を見てしまって、恥ずかしすぎるというのももちろんだけど、
今彼に会ってしまったら
きっと…抱き着きたくなってしまう。
そんな気がするから…