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月の雫

第11章 穏やかに賑やかに


そんなこんなで、何日か過ぎて。
庭からは前田と後藤を含めた短刀達の追いかけっこの声がして、縁側では小狐丸と石切丸と髭切・膝丸がお茶してて。
あの本丸から来た刀剣達も少しずつ本丸に慣れてきていると、報告が上がってきている。

『平和だなぁ。』

遠征も討伐も滞りないし。
内番も問題ないし。

和泉守「主、邪魔するぜ。」

『おー、和泉守。
どーしたのー?』

和泉守「なんだ、呆けてるなぁ。」

『んー、何の問題も起きてない時は呆けさせてー。』

和泉守「ったく。
シャキッとさせてやろうか。」

『なにー?』

歌仙「失礼します。」

陸奥守「お邪魔するぜよ。」

『!!』

シャキッとしたよ!
予想外の来客に、椅子から落ちそうにもなったし。

和泉守「油断しすぎだ、主。」

『ごめん…
歌仙兼定さま、陸奥守吉行さま。
すっかり顔色が良くなられましたね。』

歌仙「お陰様で。
本当に、ありがとうございました。」

陸奥守「ほんに、感謝しとる。」

『…良かったです。」

うん、心身ともに充実しているのがわかる。

陸奥守「ほいで、じゃ。」

陸奥守吉行が私の前に来て、手を差し出した。

『?』

その手に自分の右手を乗せる。

和泉守「って、犬かよっ!」

『えっ!?
違うの??何なの??』

歌仙「今度の主は天然なのですか。」

微笑みながら、歌仙兼定が私の左手をとった。

『握手?』

ていうか、今…
“今度の主は”って言った?

陸奥守「ワシらをおんしゃぁの刀にしてくれんか?」

『えっ…。』

歌仙「よろしくお願いします。」

『…いいの?』

歌仙「はい。」

陸奥守「頼むぜよ。」

いきなりな事で頭がついて来なくて、和泉守に救いを求めた。

和泉守「さっき、この本丸の刀にならねぇかって誘いに行ったらよ。
逆に主の所へ連れてけってさ。
肩透かしだぜ、俺の説得なんて必要ねぇんだもん。」

えー…

陸奥守「おんしの気遣い、充分伝わったぜよ。
主なのに自ら不自由な思いしてくれて。」

歌仙「甘えてしまって、申し訳ありません。」

『こんなもんじゃないよ?』

陸奥守・歌仙「えっ?」

『私の刀剣になったら、もっと甘やかすよ?
ね?和泉守。』

和泉守「そうだな。
…怒らせると、すげぇ怖いけど。」

陸奥守「それ、他のヤツも言うちょったがよ。」



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