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月の雫

第36章 契りー三日月宗近ー ※


ー月胡ー

宗近は、この本丸で一番大きな部屋を与えられている。 
その部屋を目指して、一歩ずつ歩みを進める。
今までの事を思い出しながら。

翁の初期刀で、ずっと近侍を務めていた宗近。

初めて会った時…なんて美しいのだろうと思った。

宗近は好きな者を近侍にしていいと言ったが、私ははじめから彼に決めていた。
翁を支え続けた方なら私の至らぬ所を正し、補ってくれるだろうと。

「そう、初めは純粋に支えて欲しかっただけだった。」

髭切と膝丸を顕現した時、嫉妬した宗近に注がれた彼の神力は今もこの胸に深く根を張っていて。

「あの時は近侍としての嫉妬だと思ってたなぁ。」

ずっと、私を守ってくれている。
私の拠り所であり、何にも代え難い宝。

初めてのデート、私のいた時代への旅。
思い出すだけで胸の奥が温かくなる、幸せな時間だった。
その時にもらったピアスは外す事なく、私の耳元で輝いている。

時間遡行軍が政府施設を襲撃した時、久しぶりの実戦に昂ってしまったのを沈めてくれたのも宗近だ。
このまま宗近に抱かれてしまいたい、そう何度も思ってしまった。

一度、本気で怒らせてしまった事もあったな…
あの時は本当に怖かった。

いつも、私の事を一番に考えて行動してくれて。
ちょいちょい、本心をアピールしたり。
包み隠さず、惜しみなく愛してくれた。

三日月の名の通り、静寂を纏い鋭く闇を照らすような存在。
思慮深く、隙も油断も見せない彼をいつの頃からか可愛らしくも感じるようになり。
誰よりも大切な人となった。

本丸へ戻って来た時に見せた涙や表情を、私は忘れない。
自惚ではなく、宗近にあんな事をさせられるのは私だけだ。
剥き出しの心で、全てを曝け出してくれるのは。

この人の隣に立って、恥ずかしくない私でありたい。
誇れる主でいよう。
そう思い努めて来たし、これからもずっと変わらない。
正直、まだそんな自分になれたか自信はないけれど。
これからも努力を続ける。
命ある限り、ずっと。

宗近の部屋に着き、扉の前で深呼吸をする。

『月胡です。入ってもいい?』

「…あぁ。」

中へ入ると、部屋着に着替えた宗近が縁側に座していた。
胸が高鳴る。
扉を閉め、正座をして頭を下げる。

『私を…三日月宗近様の伴侶にしていただけますか?』



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