第1章 ようこそ、主さま
春と呼ぶにはまだ肌寒いある日。
私は審神者になるため、とある本丸へ来た。
大きな神社のような作りの本丸で、本殿・拝殿・舞殿・祓え殿があり、その他の生活する屋敷があるそこは緑に囲まれ、澄んだ空気に包まれていた。
(今日からここが私の居場所か)
こんのすけ「あるじさま、こちらにお着替えください。」
と、渡されたのは装束。
神社の神主さんが着ているものだ。
『普段はこれを着るの?』
こんのすけ「はい、そちらが普段着となります。が、来客等がない時はお好きな服装でかまいませんよ。着替えが終わりましたらまず、本殿にて結界の張り直しを。その後、刀剣男士への顔見せをします。」
『わかった。』
前の審神者が亡くなったので、結界が弱まっている。
まずはそれを強化しなくては、よからぬ者(物)が入り込んでしまう。
着替える前に湯殿で身体を清め、装束をまとうと背筋が伸びる。
(仕事中はこれを着たほうが良さそうだな)
身が引き締まるようで、切り替えにはちょうど良さそうだと判断した。
着替えを済ませ本殿へと入り、早速結界を強化する。
(さて、と)
本丸全体を包み込むイメージで、力を放つ。
(こんなものかな)
こんのすけ「さすがですね、あるじさま。」
『ん?』
こんのすけ「こんな簡単に、しかも最高レベルの結界を結んでしまわれるとは!」
『力だけは…ね。』
こんのすけ「また、そんな事をおっしゃって…」
それ以外はこれからじゃないと判断できないだろうに。
この本丸の刀剣男士が素晴らしいのはわかっているが、私を受け入れてくれるかどうか…
(翁…)
私は幼くして審神者になるべく親元から離され、教育されてきた。
その指導をしてくれたのがこの本丸の前審神者なのだ。
好々爺で、力も人徳も兼ね備えた立派な方。
私を孫のように接してくれたんだ。
そんな翁の後任なんだ、どう思われるか不安でしかない。
こんのすけ「さ、御簾の前にお座りください。刀剣男士がお揃いですよ。」
.