第1章 監督生の絶望。
嗚呼、死んでしまいたい。思考はどんどん後退していく。おそらくツイステッドワンダーランドに適応しきれなかったのだろう。爪先から徐々に黒く変色していき、激痛が走りその後は感覚がなくなるようになっているのだ。それをひた隠して、今日も理想の“監督生”を演じなければならないことに絶望した。苦い生を引き延ばして得られるものは?私は帰れるの?一度転がりだした思考は歯止めが効かない。組み込まれた歯車通りに動く絡繰人形のように、いつも通りの朝を活動する。鼻が効く筈のグリムは不調に全く気付かない。むくつけき同級生や先輩、先生でさえも。短い黒髪をくしゃりと握りしめて、歯を食い縛ってどうせ戻してしまう朝食を形式的に胃に詰め込み、トイレで嘔吐する。吐瀉物を処理し、グリムを起こして朝食を摂らせれば、いつも通り教科書や筆記具を持って教室へ向かう。とんでもない怠さと戦いながら途中で合流した二人の友人と授業を受け、いつも通りに帰る。
だが、この日だけはいつも通りとはいかなかった。学園長に呼び出され、元の世界に帰る方法を見つけたが、帰れなくなっていると告げられたのだ。地面が、不安定に揺れている気がした。揺れているのは自身だった。生きるための目標を喪ったからだろう。学園長室からどうやって帰ったのか覚えていない。騒ぐグリムに構う気力もなく煎餅布団と薄い布団の隙間に体を挟み込んで気絶するように眠りに就いた。