第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
もともとこの人は格好良くて、だからこれは欲目とかではなくて…
「朔」
「はい!」
「着いてきてくれるか?」
「……はい。喜んで」
この人のためなら……
私は喜んで力を使う。
私は……この人が、義勇様が好き。
愛してる。
「……義勇様、どちらまでいかれるんですか?」
「叔父上の邸だ」
「叔父様?」
「あぁ、少し風変わりなお人でな。まるで仙人のように、森で暮らしている。あの向こうだ」
冨岡が指さした方向は砂漠化が進み始めている森林帯だ。
ここからだと………
「…………距離がありそうですね」
「あぁ、少しな」
移動手段が徒歩以外にない私達にとって人里から離れる選択が果たして正しいものか……