第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
「あの…私、こういうの初めてなんですが…」
線の細い女性が入室してきた。
「俺も始めたばかりだ。とりあえず、どこか痛いところは有るか?」
「痛いところ……」
「肩や腰……その痣は?」
「私、実は……」
女性は泣きながら、話し始めた。
彼女曰く、貧しい生活をしていた家族の為に働きに出てきたのだが、彼女を雇った男は見た目こそ善人だが、裏では女性たちを手込めにする悪人だった為に………
彼女は何とか逃げ出して来たのだという……
「非道な……」
女将を呼び、女性を保護してもらう。
王室に居れば、何かしらの対処も取れたのだが……
「……義勇様?」
「朔」
「………大丈夫ですか?」
こんな時はいつも白藤が横に居て、いつも静かに話を聞いてくれた。
朔と白藤の姿が重なる。
あぁ、白藤に会いたい。