第56章 新年用読切 新しい年を貴方と$
恋人である宇髄の手を強く握るが、彼も握り返してくれるだけ……
気付いて欲しい。
……でも、見られたくない。
お尻を撫でていた手が、太ももを這い始める。
スリットが入っているのを見つけられるのも、時間の問題かもしれない。
自然に体が強ばっていく。
スリットに男性の指が辿り着く。
地肌を撫でられる感覚に怖気が走った。
背筋が凍るような思いだ。
恐怖から体が震え始める。
「白藤?」
さすがの彼も私の異常に気付いたようだ。
彼の視線が私に向いた。
私は一体どんな顔をしていただろう。
男性の指が私の太ももを撫で回しているのは、真横に居る彼からはしっかり見えていないだろう。
触れている男性も私を見ている訳ではない。
花火で私の体が照らされた時に彼の違和感は確信に変わったようだった。