第56章 新年用読切 新しい年を貴方と$
「………いつになったら帰ってくるのよ…」
今日はクリスマス。
今年は二人で過ごそうと言われたので、料理も頑張ったし、彼のお気に入りのワインも買って。
そろそろ帰る。
その言葉を聞いてから、かれこれ三時間。
そろそろ日付変わるなー。
私は宮野白藤。
都立の教育大学に通っている。
恋人の名前は宇髄天元。
キメツ学園と呼ばれる中高一貫校で美術教師をしているのだが……
昨日も打ち上げしてたくせに……
再びかかってきた電話に出ると、どこかの居酒屋なのだろう、ガヤガヤとした音に混じりながら天元の声がする。
「悪いなー、白藤。今打ち上げでさ。伊黒に捕まってんだわ」
「………もう、いいよ。帰って来れないんでしょ?」
ブチッ。
一方的に通話を切った私は、一切手を付けていなかった料理をゴミ箱へ捨てた。
食べる気もしなかった。
ただただ、虚しかった。