第55章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも$ 上巻
宮女は下女と代わらない。
「俺の母も元は旅一座の舞手だった。王に見初められ、お手付きになったから妃姫になった」
冨岡の目が白藤を捕らえて離さない。
私は、義勇を拒めない。
ずっと、そう望んでいたから。
いつか隣にと、夢を描いていたから。
……でも、何だか怖い。
私が慕っている義勇は今の彼とどこか違う。
「………俺が怖いか?」
そう言った義勇の眼は出会った頃と同じで少し寂しそうな光を宿していて……
「……私で、良いの?」
深く息を吸い、ようやく言葉にできたのがそれだった。
「俺はお前が良い。お前以外に考えられない……」
義勇が額を白藤のそれに当てる。
「その気がなかったら蹴り飛ばしてくれ。そのままなら俺は、このままお前を抱く。意味は分かるな?」
義勇が力を抜いたのが分かる。
本当に私に委ねるのだ。
初めて会った七つの頃から、ずっと……