第55章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも$ 上巻
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さて、訳アリと聞いたからには、往来の中で開封する訳にはいかないな。
「一度郊外に出るか……」
冨岡はネオン街を抜け、更に暗がりへ向け、歩き始めた。
灼熱の太陽が降り注ぐ我らが国、フラムは昼と夜の寒暖差が激しいことでも有名である。
「ここなら良いか……」
墓地の脇にある廃屋に冨岡は足を踏み入れていた。
元々は宿を経営していたのか、廃屋になったとはいえ、寝具や座敷はそう古くは見えなかった。
円座に腰を下ろし、刀身に巻かれている封煌府を外していく。
シュル。
煉獄が持っているのは日輪刀と呼ばれる刀で、ふんだんに日光を浴びた特別な玉鋼を用いている。
宇髄は刀身が独特なカーブを有する曲刀。不死川に至っては逆刃刀である。
別段得意とするモノを持たなかった俺は個人で使用する武器を持っていなかった。
あるいは、それが狙われた要因かもしれない。