第55章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも$ 上巻
「おい!俺は別に…」
「はいはい、ちょっと大人しくしてよねー」
行商人の少年は冨岡の全身を見てから一度目を閉じる。
「んー?お兄さん、音が少ないね」
俺は昔から耳が利く。
郊外にいた遣り手ババアにバレてからというもの、その日の内に商売のイロハを叩き込まれ、あっという間に行商人の仲間入り。
その人に相性の良い武器を見繕うのが一番稼げると知ってからはキャラバンを移動しながら、行商を続けている。
「音?」
冨岡には何のことだかさっぱりだ。
「……あんまり武道向きじゃないのかなー」
ピィ---ン。
突如として鳴り始めた耳鳴りのようなノイズ。
「え?マジ?どれよ?」
片耳を押さえながら、少年は店内を歩き始める。