第51章 里帰り$
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「白藤?」
どうやら師範が一番風呂を譲ったらしい。
白藤が浴槽の縁に腰掛け、手桶で体に湯をかけていく。
冨岡が居るのは白藤の丁度、真後ろである。
「ん?」
白藤のうなじに彫り物?
髪を纏めていたから見える場所だ。
前からあったか?
ただ単に気付かなかったのか…
手拭いで体を洗う白藤を見つめていて、はたと気付く。
俺は今何をしていた?
女人の風呂を覗くなど……
いや、違う。
俺は湯が熱いか聞けば良い、それ以外の用はない。
雲間から月が顔を出す。
たおやかな銀糸の髪は月光によく映えると昨夜の情事の際に認識したのだ。
白藤は美しい。
それは柱でなくとも知っていて。
手が届かずでも構わないと多くの者が欲した。
その彼女を自分の傍に置いて、他に何の不満があろうか。
聞けば、彼女は話してくれる。
きっと、偽ることはしない。