第51章 里帰り$
だとすれば、私は果報者だ。
「ですが、使って良いのでしょうか?」
廃屋とは言え、今夜の宿がわりに選んだのは観音堂。
名前の通り、お堂中には千手観音を祀ってある。
とりあえず、何か身繕った方が良いだろう。
少し考えてから白藤が竹筒に入っている水を器に移し、観音様に供える。
「本当なら食料の方が良いんでしょうが…」
「意外と信心深いな」
「そうでもないですよ。でも、くすんでしまっているようなので、磨いて差し上げようかと」
持っていた手拭いで千手観音像を真剣に磨く白藤。
と、反対側からも手が伸びてきて、冨岡も観音像を磨き始めた。
「俺も手伝う…」
「ありがとうございます」